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ムッシュ@Paris《中編》(ムッシュその5) [フランスの思い出]

パリでの小旅行2日目の朝を迎えました。
ホテルでまったりと朝食をとった後で今夜の部屋割りを決めます。
四人の気合いのグッパーが炸裂!
結果は「foret&ムッシュ」、「Oさん&U子さん」に・・・ort

ちょっとしたショックを感じていると、そこにホテルのオバサンがやってきました。どうやら今日の午後5時までホテルの入り口のドアを閉めることになるらしく、もしそれよりも前にホテルに戻ってくるつもりがあるのなら入り口のドアのカギを渡すから出かける前に言ってくれとのことです。
僕たちは「そんなんアリ?」と驚きながらも、家族経営の小さなホテルだからそんなこともあろうと納得するしかありません。まぁこちらもわざわざパリまで来て、5時前にホテルに戻ろうなんぞとは思わないのが普通なのですが、実はこの日の夕方に、僕はパリに住むフランス人の友人の家に遊びに行くことになっていて、そこに持って行く荷物をホテルに置いたまま出かけ、4時頃にそれを取りにホテルに戻ろうと思っていただけに、なんとも鬱陶しいことですが、こうなってしまうと入り口のカギを借りていくしかありません。

そんなこんなで準備を整えつつ出かけようとしていると、このとき初めて顔を見るホテルのオジサンが「ちょっと来てくれ」と僕を呼び止めました。何事かとついていくとフランス語も英語も通じない日本人の客が来たので助けてくれとのこと。
『かー、めんどくせー観光客だなぁ、もう・・・』と内心で思いながら受付まで行くと20代前半ぐらいの日本人女性が二人。彼女らは突然現れた薄汚い同郷人に旅情をぶち壊された思いなのか、こちらがオジサンの話を日本語で説明しても「はぁ・・・」って反応で愛想なし。全く持ってふがいない思いをしつつも無事任務を終え、気を取り直して出発です。OさんとU子さんとはメトロで分かれ、ムッシュとともにギメ美術館の最寄り駅であるイエナ駅に向かいました。

いつぞやのblogでも書いたとおり、僕は小学生時代に浮世絵にはまるという変な子どもだったのですが、実はギメ美術館には浮世絵フリーク垂涎の名品が数多く所蔵されているんですね。本来ならば「ムッシュを観察する」というくだらない目的であとをついていくどころではなく、パリに向かう列車の中から二人で熱いトークに花を咲かせつつ、肩でも組んでスキップしながら向かうべき美術館だったのかもしれませんが、当時は「わざわざパリまで来て何故ギメ美?」てな感じだったので、特に盛り上がるでもなく、だらだらと二人でムダ話しをしながらギメ美に向かいます。

Image1[1].jpg
《ギメ東洋美術館です》

中に入ると1階はこんな感じ。
gime_b.jpg

lrg_12312415.jpg

ムッシュはすでに興奮気味。
「いやぁ、いやいや・・・」といいながら、やたらと「スゴイなぁ」を連発。僕にはそのスゴサはわからず、日本の仏さまとくらべたら、あまりありがたみのある顔には見えませんでした。なんとなくハクション大魔王のアクビちゃんの顔に見えたりして・・・

そんな中でもムッシュがお気に入りだったのが、象の顔をした神様の像。
「ガネーシャ」というお名前の神様で、ムッシュのお話によると、日本では「聖天さん」として親しまれている神様だとか。実はこの神様の像はサイズこそちがうものの確かムッシュの家の暖炉の上にもあったような気がしたので
「この像ってMさんの家にもありましたよね?」と聞くと、
「うん、ありますよ。こいつはね、怒らせたら大変なことになるんですよ」とMさん。
神様にむかって「こいつ」呼ばわりしている時点で、大変な目にあう資格は十二分にゲットしているはずなのですが、「それに巻き込まれるのはまっぴらゴメン」と思いつつ、僕は美術館内部に置かれている神様をやたらと「こいつ」呼ばわりするムッシュについていきます。

そうこうしているうちに今度はネパール・チベットあたりの仏画のコーナーに入っていきました。
日本の仏教でイメージするのと全然ちがいますよね、この当たりの仏画って・・・

kami.jpg
大変な目にあいたくないので、コメントを差し控えさせていただきます(笑)

いろいろと見ているうちに、ふとムッシュが
「僕はね、大学でヒンディー語とかネパール語とか勉強してたんですよ。だから、このあたりの言葉なら5カ国語くらいわかるんですよ」
と言い出しました。
僕も「へー、すごいですねぇ」と素直に感心していると、ムッシュはある仏画の絵に描き込まれた文字を見ながら
「えーと・・・ふん、ふん・・・ほぅ、なるほどね、はいはい・・・」
などと何かを納得したかのような素振り。
僕も思わず「何が書かれているんですか?」と純粋にムッシュに尋ねてみたところ、
「いやぁ・・・ハッ、ハッ、ハッ・・・」と笑いながら次の絵に・・・
ってスルーかよ!!

なんかもう・・・脱力させられまくりです・・・
それでも「こいつはね、日本では『閻魔大王』になってる神様なんだよね」などといろいろ教えてくれるムッシュの話は、それはそれでなかなか勉強になります。

※ちなみに閻魔大王って極楽行きか地獄行きかを決めてもらうため、死後その前に引きずり出されるということなのですが・・・

えんま.jpg
日本のこれなら恐くても、まだ我慢できそうですが、チベットあたりのお姿は・・・


Yama_tibet.jpg
こんなん絶対ムリ!チビる自信120%!

そんなこんなで1階の展示室をひととおり見終えるとムッシュは
「もう一回、さっきのガネーシャ見に行ってもいいですか?」と言うので、つきあってついて行くと、ムッシュは再びガネーシャの像をしげしげと見つめながら
「いいねぇ・・・ウチに持って帰りたいなぁ・・・」と一言。こんなでかいの持って帰って何をしようというのか・・・

とにかく1階の展示室を見終えると、2階の中国・日本コーナーにはムッシュはほとんど目もくれずにほぼ素通り。別展示室に日本の東寺をモデルにした立体曼荼羅があったので、それを見に行こうと誘っても、
「あ、foretさん行きたいの?じゃあ行こうか・・・」
てな感じで、いまいち興味は引かれない様子でした。
やはりムッシュには「オドロオドロしい系」の神様の方が性に合ってるんですかね。
ちなみにギメ美にある日本の仏様(仏像)たちはなんとなく居心地悪そう・・・ 陳列棚に収められているよりも、やっぱりお寺でお姿を拝見するのが一番ですね。

ギメ美を出て、二人でぷらぷらとイエナ駅の方に向かう間もムッシュは、「あのガネーシャが欲しいなぁ」と何度もつぶやいていましたが、僕は相手にせず、
「Mさん、これからどうします?エッフェル塔まで行きますか?」
と初パリのムッシュに一応(?)気をつかったつもりで言ったのですが、ムッシュは
「いや、これでもう僕の旅の目的は終わりましたから」
とあっさりと拒否。
何度も言いますが、この人はパリに何をしに来たのでしょう・・・

『もう勝手にしなはれ!』って感じで、僕は今からオルセーに行く旨をムッシュに告げつつ、一応これからどうするつもりなのかと聞くと「いやー、まぁ適当に歩いてみてからホテルに戻りますよ」とのこと。しかも僕がホテルにいったん戻ろうとしていた時間よりも早くに戻ろうとしていたので、そうなると僕が持っているホテルの入り口のカギをムッシュに渡さなければいけません。
一抹の不安を覚えながら、僕は
「先にホテルに戻るつもりなら、Mさんにホテルのカギを渡しておきますけど、僕は4時にホテルに戻るので、そのときにホテルの外に出て待っていてもらえますか?」と頼みました。
ムッシュは「あ、いいですよ。4時ですね」と答えてくれ、僕たちはイエナ駅のところで別れたのです。

その後、僕はオルセーを見物し、「こぉひぃむっつ」の方でない本物のカフェ・ド・フロールにも寄り、サン=ジェルマンあたりをうろつきながら4時にホテルに戻ったのですが・・・・


ムッシュ、ホテル入り口に姿を見せず・・・
(ま、お約束通りの展開とも言えますが・・・)

※続く
コメント(13) 

コメント 13

Bonheur

面白い記述満載(^O^)
本場の閻魔さま、お会いしたくないですね。。
それにしましてもムッシュ、非常にユニークでとらえどころがない方ですね。この方にお付き合いされたforetさん、懐の深い方なんだなーと思いました。

続き。。。どうなる、foretさん!!
by Bonheur (2009-10-24 11:23) 

TaekoLovesParis

foretさん、待ってました!ムッシュの続きですね。
ムッシュってどんなお顔なんでしょう。パンチパーマの顔しか
浮かびません(笑)
foretさんの描写がお上手だから、ムッシュの興奮ぶりが伝わって
きますよ。<このあたりの言葉5ヶ国語>の件は大笑い。
うそつくと閻魔さまに舌抜かれるって、小さいとき、言われたことが。。
ギメ美術館の写真、きれいに撮れてますね~。川岸から撮ってる
んですか?私も撮ったんですが、全部がはいらなくて。。
foretさん、浮世絵が趣味の小学生って、ミュージカルにバレエに、、、
意外なものがでるわ、でるわで、、(笑)

ホテルで会った日本人観光客2人、失礼な人たちですね。
お世話になったらお礼くらい言わなきゃね。

続き、待ってます。
by TaekoLovesParis (2009-10-24 21:02) 

foret

★Bonheurさん
僕の懐なんて全然深くないですよ。
ただ脱力させられると何かを言う気力すらそがれてしまうんですよね。
チベットの閻魔さま、恐ろしいですよね。
高相被告のように「そうっス」なんて返事をしたら、
その時点でアウトでしょうな笑

★Taekoさん
ムッシュはパンチパーマなんてしていません。
ごく普通の中肉中背のオヤッサンって感じの人です。
ネパールとかチベットの文字って全く意味不明なので
「5カ国語」の話が出たときには、真面目に感心したのですが
完全にやられちゃいました笑
まぁいろいろな思い出を作ってくれたのですが、
さらに話は続きます
by foret (2009-10-25 01:11) 

c-d-m

taekoさんのコメントに爆笑。
パンチのイメージは仏様の有難い御姿からでしょうかね。
今後は神々しいパンチなムッシュで妄想が広がりそうな予感です。
後光は差さないと思うけど、こういうネタ好物です。

ところでふと思いましたが、有難い東洋の神様を熱心に信仰しているムッシュっですが、彼こそいわゆる魑魅魍魎系じゃないでしょうかねぇ。
by c-d-m (2009-10-25 11:37) 

foret

★c-d-mさん
そういえばパンチパーマとは言わなくても天パ系で短髪の人の何割かは、高校時代に仲間から「大仏」と呼ばれた暗い過去を持っているのではないでしょうか?
僕の友だちにもそういうやつが確かにいました。

仏像でも四天王などの像などでよく、その足元に踏みつけられている邪鬼とかがいますが、ムッシュはそういう系統の人物かもしれません笑
by foret (2009-10-25 12:47) 

Mimosa

ムッシュさん、相変わらず面白いというか変わった方ですね~。
私は未だギメ美術館へ行ったことないです。バカラ美術館へ行く時も、ここはこの先も訪れることないだろうな~と素通りしたような気がします...。なぜに、ムッシュさんの初パリ=ギメ美か、私には理解不能です!
foretさん、大変そうですね!ホテル前に約束どおり現れなかったムッシュさんの行方が知りたいです。続き、楽しみにしてますね~♪
by Mimosa (2009-10-25 12:51) 

foret

★Mimosaさん
お久しぶりです
僕の場合、Mimosaさんとは逆に
ギメ美にはこの後、もう一度行く機会があったのですが
バカラ美術館には行ったことがありません
行っておけばよかったと今、後悔しています。
ムッシュは確かに変わった人でしたねー
今まで会った人の中でも、一番変わっていたかも笑
この後、またびっくりするようなことが・・・
by foret (2009-10-26 10:55) 

STELLA

おもしろいです!続きが楽しみ!
ギメ美術館は私はまだ行った事がありません。
フランス人の友人達はすごく気に入ってるみたいで、まだ行ってないと言うと「信じられない!」と言います。
by STELLA (2009-10-28 19:42) 

satokumi

はじめましてー。

とっても楽しく読ませていただきました!
閻魔大王・・・怖かったぁ。

ムッシュとのやり取りがとっても面白く
(foretさんは大変でしょうけど)
続きがとっても楽しみです~。

by satokumi (2009-10-29 21:26) 

foret

★STELLAさん
ご無沙汰してます。
ギメには・・・確かに日本人だとなかなか足が向きませんよね。
僕も2回行きましたが、いずれも誘われて行ったものですし・・・
でも昨年(一昨年?)日本で「ギメ美術館展」が開かれたときは、大変な人出でした。

★satokumiさん
僕がパリで出会った人たちって、ムッシュとかNさんのような
「脱力系」の人たちが多かったような気がします。
なかなか更新しないblogですが、これからもよろしくお願いします。
by foret (2009-10-30 01:54) 

kuwachan

こんにちは。
初めまして。
ご訪問ありがとうございました。
パリは3回行ったことがありますが、この美術館には行ったことがないです。
今度パリに行く機会があったら覗いてみたいです。

ついでに↓の記事の件でスミマセンが、これすごいですよね。
TVのリアルタイムで見て爆笑しました。
実は友人が録りためたものを持っていて焼いてもらっちゃいました(*^^)v
by kuwachan (2009-10-30 12:56) 

neopapa

はじめまして~訪問ありがとうございました。
楽しく読ませていただきました。

フランスはスペインに行く途中の空港での乗換えしか経験無いのですがギメ東洋美術館面白そうですね。
ある意味外から東洋がどう見られているか見れて楽しいですね。
私はたどたどしい英語(単語のみとも言う!)しか話せないので、凄く羨ましいです。


by neopapa (2009-10-30 23:54) 

foret

★kuwachanさん
ご訪問ありがとうございます。
ギメ美術館は昨年(一昨年?)に、美術館が保有する日本の浮世絵や
肉筆画が東京と大阪で里帰り展示され、
とてもたくさんの人が訪れていました。
東洋系の美術品を所有する美術館として
ヨーロッパでは有数の美術館だそうです。
(でも、当時はそんなこととはつゆ知らずでしたが・・・)
グッチさんのは最高ですよね、
僕も腹を抱えて笑いましたw

★neopapaさん
ご訪問ありがとうございます。
記事では随分とえらそうなことを書いていますが、
僕も今ではフランス語がさびついてしまって
もう自信がありません。
スペインかぁ・・・
僕は行ったことがないのですが、行っておけばよかったと後悔しています。
by foret (2009-11-01 22:33) 

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